1000枚のトースト

ささやかな日常をしとやかにシタタカに綴ります

辛い旅の思い出

○十年前の話。

女友達が「津軽地吹雪体験&ストーブ列車の旅」をしたいと言い出した。

「寒い時期にわざわざそんなとこ行かなくても…」と思いつつ、調子の良いワタシは同行することにした。

初日、待ち合わせ場所にギリギリの時間に現れた彼女はとても不機嫌だった。

そしてこれから地吹雪体験に行く格好にしてはちょっと軽装だった。

一方、滑り止め付きの登山も出来そうな靴、オットットと兼用のゴアテックジャンパーに大きいリュックスタイルのワタシ。

チグハグな格好の女二人、2泊3日の旅は始まった。

棟方志功の版画を見ても、斜陽館を見学しても彼女は相変わらず不機嫌。旅の1番の目的の「地吹雪体験」が出来れば機嫌が直るだろうと、そこに希望をつなぐことにした。

ところが当日は地吹雪どころか憎たらしいほどの快晴。だだっ広い田んぼの中を地吹雪体験用の格好をさせられてただ歩く。晴天なのに箕にカンジキである。

ストーブ列車に乗っても車窓から見えるのは大して珍しくもない田舎の風景。冷え切った二人の仲はストーブでは温まらない。

地吹雪体験ツアー不発に彼女は益々不機嫌になり、ワタシの心の中だけ地吹雪で大荒れである。

「もうこんな旅は耐えられない」ワタシは彼女に不機嫌の理由を聞いてみることにした。彼女の返答次第では旅の途中で解散する決意までしていた。

彼女曰く「旅の出発の日まで仕事が忙しく疲れていた」。

ワタシの「とろクサさに」イライラしたと付け加えた。

他にも不機嫌の理由はあったのだろうけれど詳しくは聞かなかった。

とりあえず気をとりなおし、予定通りその夜はお寿司を食べに行った。

そのお店のお寿司がとても美味しく、またお値段も良心的だったことで仲直り(?)し旅が終わった。

 

もっと早く彼女の気持ちを聞くべきだったのか?

ワタシがもっと気配りしてサクサク動くべきだったのか?

彼女はワタシに添乗員を求めていたのか?

時間が経った今でも、時々あの青空とあの旅の心細く情けない気持ちを思い出す。

旅の仲間選びには気をつけようと肝に銘じた出来事である。